第7回 技術の底上げをするための教育

何に重きを置いていくのか

ヴィーネクストがスタートし、日常的に業務を行っていく中で、いろいろと考えることがありました。一番考えたことは、発展していくために強化していかなければならない点は何かということでした。
システムの開発というビジネスを、基本的には日本の企業を相手に行っていく訳ですから、下記の2つの目標と想定しました。

(1)システム開発会社としての技術力の向上
(2)(日本的な考え方に基づいた)ビジネスパーソンとしての水準の向上

この2つの両輪をつなぐ軸として、「文化の交流」がなされれば、わたしが思い描いてきた「架け橋」を、ヴィーネクストとして実現できるに違いないという風にも思えました。

何を強化していくのかの目標は定まりました。次はどのように水準を上げていくのかということを考えなければなりません。わたしは、それまでのブリッジSEとしての経験から、2つ目の方に重きを置いて教育を行う方が良いと考えました。当時も既にベトナムの技術者が優秀であるということは、良く知られていることでしたし、わたしも実感していたからです。
しかしながら、1つ目に関しても、更に「つよみ」として向上していかなければならない部分もありました。それは、一人一人のコーディング能力の高さとは別の側面です。
極端な意見かもしれませんが、当時のベトナム人技術者は、シンプルに個別のプログラムを作ることには非常に優れていながら、それを全体像として俯瞰してソリューションを提案することは苦手でした。仕様書を設計に落とし、開発者がプログラミングするという全体を把握することが身についていない為、不要な複雑さを持つシステムとなってしまう事も多くあるとも感じていました。また、実際にシステムが使用されている状況が分からないため、使用感についての考え方も定着していませんでした。

そこで、これらの向上のために実際に行ったことを紹介します。

前提としてのユーザビリティ

日本の開発者でも苦手な方もいらっしゃると思いますが、ユーザーの業務内容や入力の流れ、こだわりポイントなどを勘案して、設計ができるかどうかという点です。これは、そもそも日本でのビジネスの体験が無いのですから、我々が細かく説明することしかありません。そして、会社の中で感覚やセンスとして地道な蓄積が必要でした。

  • 画面の中に可能な限りの項目を入れたいという要望
    →どうすればスペースが節約できるか
  • 商品体系や顧客情報の持ち方が詳細
    →ツリーの考え方や選択手法の提案ができるか
  • 入力順序や入力項目の選択が複雑な場合
    →業務フローに沿っているか

上記の例のようなことは、仕様書をクリアするという事だけを考えていたら、なかなか身につかないものです。習得に関してショートカットはありませんので、今でも新人が入れば丁寧に説明を行っています。

プロジェクトのタイムマネジメント

時間を守るというのは、ビジネスマナーの基本なのですが、その側面とは別に「納期」や「開発コスト」「段取り」という視点を、タスクに組み入れることにしました。これは、プログラミングの技能が高いという面が、職人的にコーディングを行ってしまうという弱点にならないように、業務遂行の基本として向上させたいという思いからでした。

  • 進捗管理を業務の1つと認識させる
  • 仕様書に可能な限り曖昧な部分を残さない
  • 納期を含めて、物理的な距離をブラックボックス化させない

特に3つ目に関しては、ベトナムと日本には、当然、時差があります。約束が日本時間であるかベトナム時間であるかによっても、その後のやり取りに影響を与えます。プロジェクト全体の流れをハンドリングするという感覚を伝えています。

パフォーマンスのチューニング

ユーザビリティとタイムマネジメントを総合的に考えることができるかどうかということの実践です。ある意味、ベトナム人の技術者にとっては、今までやってきたことを覆される思いだったかもしれません。

  • 仕様書どおりに動けばよいという考え
    →レスポンス時間や処理データの量を想定し、心地よく使用できるシステムを開発する必要がある
  • 難しいプログラミングや、複雑な設計ができる方が、評価が高いという風潮
    →技術力の高さが重要なのではなく、システム全体としてのレベルアップをする必要がある
  • フロントとバックヤードのバランス
    →画面の設計という俯瞰の視点と、1つ1つを積み上げていくバランスが重要となる

全体像の出来上がり具合を想像してもらう事と共に、依頼時に具体的な検索の秒数や、実装された時に使われるデータ数を伝えることで、テストと本番の違いなどについて徐々に慣れていってもらいました。

これらの取り組みは部分的な話ですが、実はもう1つベトナム人の苦手なことで改めて分かった側面があります。
それは、負の共有をあまりしたがらないということです。自分の失敗を周囲に伝えたり、技術的にわからないことを聞くということ(「知らない」と言うこと)が、体験的に少ないのです。テクニカルな部分での「つよみ」の強化と並行して、「失敗を共有することが、次の成功と礎となる」ということを、実感してもらうための取り組みを行いました。
これらは、強化したい目標の2つ目、ビジネスパーソンとしての水準向上にもつながることでした。

(続く)