第3回 ブリッジSEとして果たした役割

日本とベトナムのビジネスのやり方の違い

ベトナムでのプロジェクト、自分にとっての初めてのブリッジSEとしての仕事が始まりました。わたしは、クライアント企業にも、オフショアチームにも属さない立場で、両者のやり取りをスムーズにすることが主な仕事と考え、取り組んでいこうと決めました。

プロジェクトが進んでいくと、日本とベトナムの慣習・考え方には、大きなギャップがあり、日本で仕事を始めていた自分にとっても、その違いには驚くことがたくさんありました。それは大きく3つのポイントにわけられます。

まず1つ目は、『共有する』ということの難しさを痛感しました。
プロジェクトには、大きな最終的なゴールを目指すため、小さなゴールを積み重ねていく必要があります。
わたしは、クライアントから依頼を受けた機能の実装やバグ修正などのタスクを、ひとつひとつできるだけわかりやすく、オフショアチームへ伝える努力をしました。チームのメンバーは、わたしの説明に対して、理解したと言ってくれたので、信頼してタスクができるのを待ちました。
しかし、できあがったものを確認すると、わたしから依頼したそのタスクのゴールとは全く違ったものがあがってくるということが度々ありました。
わたしは、こちらの意図が伝わっていないというコミュニケーションのずれをどう埋めたらいいか考えました。
そこで、説明した内容やスケジュールを、どう受け止めたかを、依頼した相手に再度説明してもらいました。また、日本人同士だと、仕様書の行間を読むというようなことがありますが、それは難しいという事にも気が付きましたので、その行間をきちんと伝えるようにしました。

2つ目は、ベトナム人は1つの考え方にとらわれやすいということです。
ベトナム人は、これが正しいと思ってしまうと、なかなかその考えを変えることが難しい傾向にあるように思います。
タスクをお願いした際、オフショアメンバーが一度やり方を決定してしまうと、そのやり方にこだわってしまい、そのやり方が、難しい・効率が悪いとしても、変更することはありません。そのために、簡単な修正にとても時間がかかってしまったり、スケジュールに支障を来してしまったりということもありました。
これに関しては、修正指示などを出した際に、どういったやり方で解決しようとしているかという点を確認することで、解決しました。問題なければそのままお願いし、少し難しく考えているようであれば一緒にやり方を考えるという方法をとりました。

3つ目は、ベトナム人は相談をすることが苦手ということです。
1つ目と2つ目のポイントにも関係があることですが、ベトナム人は、「前もって相談する」ということが苦手です。
日本では、ビジネスにおいて、スケジュールが後ろ倒しになりそうな場合、関係者にその旨と理由を伝える・相談するということが当たり前に行われますが、ベトナムのオフショアチームと仕事していると、間に合わないことを当日に報告を受けることが多々ありました。
ベトナムでは、「できない(間に合わない)」ということは恥ずかしいという考えがあり、それを相談するという事は、考えにくいようです。
これについては、それは恥ずかしくない、日本とのビジネスにおいてはとても重要なことだということを熱心に説明しました。そうすると、徐々に相談をしてくれるようになりました。
もちろん、自分自身も、ブリッジSEとして、スケジュール遅延がないよう、リマインドをするといったフォローもしっかり行いました。

説明した3つのポイントの通り、ベトナム側の慣習や考え方を理解し、どのように自分がフォローできるか考えてプロジェクトを進めました。

ベトナムでのオフショア開発成功のポイント

初めてのプロジェクトは、日本とベトナムのビジネスの考え方のギャップを埋めていけばプロジェクトがよい方向に進んでいくという事が、現場の体験でわかり、実践を重ねることができたため、成功というゴールに辿りつくことができたと思っています。

その初めてのプロジェクトでの経験があったからこそ、オフショア開発プロジェクトのブリッジSEや日本とベトナムの間をつなぐビジネスを続けていくことができていると思います。
10年にわたり、この仕事に携わってきて、ベトナムでのオフショア開発成功のポイントというのを自分なりに導き出しました。

それは、オフショアチームに信頼するパートナーがいるかどうかという点です。
前項でお話しした3つのポイントは、オフショアチームだけではなく、ブリッジSEである自分の努力も必要です。もちろん、毎回ベストは尽くしますが、そのたびに日本のビジネスのやり方を一から共有したりするのはたいへんです。
そこで、チームメンバーは入れ替わりがあっても、こちらの基本的な考えを理解してくれているメンバーがおり、ベトナム人の立場でその点をフォローしてもらえると、とてもスムーズに仕事が進みます。

また、その信頼の元、指示されたことだけではなく、アイディアを出したりやり方を工夫したりする意欲があるなど、仕事に対して前向きに取り組む姿勢を持っているかという点も大切です。前向きな取り組みは、柔軟な考えを持ったり、わたしたちに相談をしてくれたりと、ビジネスの可能性が広がります。
こういったパートナーとの関係を築き、育てていくという事が長期にわたり、オフショア開発を成功させていく秘訣だと思います。

(続く)