Vol.05 おおらかな国の優しい民族衣装

何でもありの民族衣装、ロンジー

日本では、サザエさんのお母さんのフネさんのように、日本の民族衣装である『着物』を、日常的に着る人は、今ではごく少数派です。
仕事で何度か訪れたことのあるベトナムも、民族衣装の『アオザイ』は、パーティや式典、結婚式などに着る、いわゆるハレの日の衣装で、普段着は洋服がほとんど、という印象でした。
ところが、ミャンマーで暮らし始めて驚いたのが、皆、民族衣装を日常的に着ていることです。
ミャンマーの民族衣装は、『ロンジー』とよばれる巻きスカートのようなもので、筒状に縫った長方形の布の中に体を入れ、巻きつけて着用します。
男性は、地味な色合いのチェック柄を着ている人が多く、体の正面でくるっとねじって止めています。
女性は正面ではなく、片側に寄せて余った部分を折り込んでいます。写真のように、ロンジーとトップスが上下セットになった『ワンセット』と呼ばれるものや、Tシャツやカットソーなどの洋服を上に合わせて着ている人も多いです。

看護婦さんは紺色のロンジー、学生は緑色のロンジーなど、立場によって決まったロンジーの色もあるようで、小さな子供が白いシャツに緑色のロンジーを着て、教科書が詰まった大きなリュックで通学する姿などは、可愛いらしくて見入ってしまいます。

工事現場の男性や、道端でボール遊びに興じる人なども皆ロンジーを履いているのです。
雨が降ったり、スポーツをしたりする場合はミニスカートくらいの丈までたくし上げて短くしたり、水浴びするときにロンジーを目隠し代わりにしたりしている人も見かけました。
中年になるとお腹周りがどっしりしてくるミャンマー人ですが、ロンジーならどんなに太っても巻くだけなので問題なし!ハレもケも、どんなシチュエーションも受け止めるロンジー…もう何でもありですね。細かい事は気にしない、おおらかで優しい国民性を表した民族衣装のように感じられます。

そう考えてみると着物は、季節毎の細かな決まりがあるし、事前に長襦袢に半襟を縫い付けてしっかり準備をしてから着用します。周囲との調和と規律を重んじる、几帳面な日本人らしい民族衣装といえるのかもしれません。

ジーネクストミャンマーの社員も、ある日はダメージデニムにロックTシャツ、ある日はシックなロンジー、ある日はサクランボ柄のワンセット…と、同じ人が今時の服装と民族衣装を日替わりで着てくるのが面白く、日々のファッションチェックは密かな楽しみです。

ローカル仕立屋さんでオーダーメイドに挑戦!

私が、特に素敵だと思うのが、上下が揃ったワンセットです。女性らしくて優雅!

当初から、このワンセットに憧れていた私。オーダーメイドで作ってもらうと知ってはいたものの、どこでどうやって作るのかわかりません。

しかし、ある週末、息子を抱っこして近くのショッピングモールへ行く道すがら、レトロな足踏みミシンが置いてある仕立屋さんらしきお店を発見!

これは、千載一遇のロンジーチャンスでは?!とひらめいた私は、ショッピングモールでロンジー用の布を、物色し購入。その布を携えて「ミンガラーバー!」とそのミシンがあるお店に突入しました。念のため「テーラー?」と尋ねると、やはりそのようです。

布を見せ、「ロンジーロンジー」と言うと、私の希望は伝わった様子。「オッケー!オッケー!」と、仕立屋のおばちゃんがメジャーを取り出します。

もちろん息子も一緒ですが、なんといってもここは赤ちゃんに優しい国ミャンマー。(前回コラム参照)
おばちゃんの娘さん、旦那さんなどが家の奥から出てきて、あっという間に私の腕から息子をとりあげ、抱っこしたり、写真を撮ったりして預かってくれました。

その間におばちゃんは、テキパキと採寸し、スカートはジッパーがついているタイプか筒のタイプか?襟のデザインは?など身ぶり手ぶりで確認。

スカートはジッパーとジェスチャーで伝え、襟のデザインは、おばちゃんの娘さんが着ていたシンプルなVネックを指差しオーダーは完了しました。シンプルなVネックを指差した時の、「え?これでいいの?」というおばちゃんの表情が気になったものの、身振り手振りでちゃんとオーダーができた事に、大満足で帰宅しました。

おばちゃん渾身のワンセット完成!

二週間後、注文書に書いてある仕上がり予定日、仕立屋さんを訪れると、店内に高々と吊るされている私のワンセット(写真左のブルー)を発見!

…おや?おやおやおや?

シンプルなデザインをお願いしたはずが、なぜかリボンとフリルがついている!

フリルは、柄に合わせて布を折り込み、全部違う色のビーズを縫い付けた凝ったデザイン。リボンにも布の色に合わせたビーズが縫いつけてあります。明らかに力作です。

「どう?良いでしょ!」とばかりにリボンとフリルを指差し、満面の笑みのおばちゃん。

(ありゃりゃ、シンプルが良かったんだけどな。でも好意でつけてくれたんだよね…。)

おばちゃんの笑顔を見たら、「私はシンプルが良かったの」とは言えず、こちらも満面の日本人スマイルを繰り出して、アラサーである私には可愛すぎるデザインのワンセットを持ち帰ったのでした。

はからずも、おせっかいで優しいミャンマー人VS和を重んじる(NOと言えない)日本人という構図が浮き彫りになり、若干失敗した感がある初めてのオーダーメイドですが、懲りずにモールに行くとロンジー用の布をチェックしている私。

それほどに魅力的な、おおらかで優しい国の民族衣装、ロンジーなのです。