Vol.29 電気に振り回される日々 in ヤンゴン

ヤンゴンの挨拶の鉄板とは

「最近停電多いですね〜」「昨日の停電長かったですか?」「ここ1週間停電してないんですが、どうしちゃったんでしょうね?」…ヤンゴンに住んでいる人が、季節の挨拶や、お天気の話のごとく交わしているのは、停電の話題です。

ヤンゴンでは、まだ日常的に停電が発生します。送電線が切れてしまったり、配電盤が燃えてしまったり、はたまた変電所のトラブルで停電が起きます。また、水力発電がメインのミャンマーでは、乾季の終わり頃になると、1日数回停電したり、数時間続けての停電が起きるなんてこともあります。

最近驚いたのは、もうすぐ3歳になる息子が、部屋の電気を消した時に「あ、停電!」と言ったことです。また、雷の音を聞いて「雷!停電しちゃう!」とつぶやいていました。停電がどれほど日常的であるか簡単に想像がつくというものです。

電気が止まると、水も止まってしまいます。水道水や井戸水は、いったん各家のタンクに貯め、それを使うのが一般的ですが、タンクに水を貯めるためのモーターは電気で動いているため、停電している間にタンクの水を使い切ってしまうと、水が使えなくなってしまいます。
また、シャワーなどはそのままだと水圧が足りないため、プレッシャーポンプという機械をつけて、水の勢いを保っているのですが、停電するとこの機械も止まるため、タンクに水があったとしても、シャワーを浴びることはできなくなってしまいます。

30時間の停電予告の末

そんなある日、工業地域の工事のために、週末に30時間の停電があるというニュースが流れました。複数の地区が対象になっており、土曜日の昼12時から、翌日の夕方まで連続で停電する予定だというのです。

新聞やテレビ、インターネットで停電の予告がされていたほか、「明日は停電します」と拡声器を積んだ車がお知らせにまわっていました。我が家も停電する地区の範囲に入っていたため、急遽ホテルを予約して避難することにしました。

避難前の準備として、冷蔵庫の食材をなるべく食べ尽くし、万が一のことを考えて、冷凍庫に大事にとっておいた日本の高級アイスクリームも全部美味しく食べました。残った食材はありったけの保冷剤と一緒に冷凍庫に詰め込みました。

そして、土曜日の昼の12時から停電…という予告に合わせて、午前中のうちにシャワーや洗濯を済ませて、停電する時間にホテルに出発し、翌日の停電が終わる頃に帰宅する、という完璧な計画を立てたはずでした。

ところが、当日は、予告よりも早い朝7時くらいから停電が始まってしまったのです。
「これは、本番の停電なのだろうか、それとも日常の停電で、本番の停電は予告通り12時から始まるのだろうか…」と、洗濯も、シャワーも、何もしていなかった私たちが為す術もなく途方に暮れていると、電気が復活しました。

その後、急いでシャワーを浴び、ホテルへ向かったのですが、後に停電予告地区に残った人に話を聞いてみると、「ちょっと停電したけれど、30時間連続では停電しなかった」と言っている人が大半でした。

後日、「停電が予告されても、実際にはしないことも多いよ」、と長く住んでいる人から聞きました。

電気が来ても来なくても、どっちにしても振り回されているな…と思ったものです。

電圧が安定しないミャンマー

停電の他にも、電気に振り回される事がもう1つあります。ミャンマーでは、電圧が安定しないのです。一般的に、200ボルトの電圧と言われているのですが、安定して200ボルトの電圧が出るわけではありません。時間帯によっては、180ボルトになったり、210ボルトになったりするので、電圧の不安定さに耐えられない電化製品はすぐ壊れてしまいます。

ミャンマーのエアコンには、日本では見慣れなかったセーフガードという機械が必ずついているのですが、これは電圧の異常を察知して、エアコンへの電気を止めるものです。
冷蔵庫や扇風機など、電化製品も電圧の不安定さの影響を受けてよく壊れます。冷蔵庫などは3年おきに買い換えているという話もよく聞きます。

会社では、パソコンがたくさんありますので、急激な電圧の上下を吸収する電圧安定器という機械を入れています。この機械は、ミャンマーでは一般的ですが、日本にいる時は、名前も聞いた事がありませんでした。きっと日本では、各家庭に電気が送られる前にこのような機械が入っていて、安定した電圧の電気が供給されているんだな…という事を、ミャンマーに住み始めて初めて考えるに至りました。

また、停電対策としてディーゼルを燃料とする発電機も備えていますし、停電した時に、しばらく電気を供給するUPSと言われる非停電装置も使っています。電化製品を安定して動かすためには、これまで見た事もなかった装置がいくつも必要になってくるのです。

当たり前のように享受していたものは、決して当たり前ではない。そんな事を停電や壊れゆく電化製品から、日々教えてもらっています。